教員免許更新制度廃止へ!?来年にも法改正?




第1次安倍政権下の法改正で2009年に導入された「教員免許更新講習制度」ですが、教育委員会の8割が「廃止」または「見直し」を望んていることからも分かるように、教員にとってとても負担の大きい、評判の悪い制度です。

最近、この制度の弊害が明らかになったことから、見直しの機運が高まってきたのですが、萩生田文部科学大臣の発言や、中教審の議論からは、「廃止」ではなく「見直し」の方向で進んでいると思われていました。

2021年2月2日 萩生田文科大臣は閣議後会見で教員免許更新制度について
「教師が多忙な中で、『経済的・物理的な負担感が生じている』との声や、『臨時的任用教員等の人材確保に影響を与えている』との声もあることは承知している」と説明しました。
そして、「スピード感を持って制度の見直しなどの取り組みを具体化していきたい。本気で取り組む」と述べ、教員免許更新制度の見直しに強い意欲を表明しました。

5月24日の中央教育審議会の委員会で、とりまとめ役の加治佐哲也・兵庫教育大学長が、教員免許更新制度について制度の廃止も検討していることを明らかにしました。

この日の委員会では、更新制の見直しを検討している文部科学省が「そもそも免許状に有効期限を設けて更新する仕組みが必要と言えるのか」と議題を提案。
更新に必要な講習ではなく、各教育委員会が行う研修に加えて、大学や民間会社などが作るプログラムを利用する仕組みを案として示した。
その上で加治佐氏が「こういうことができれば、更新制でなくてもできるのではないか」と発言。
一部の委員から、更新制の存続を前提にした意見があったため明確に言及はしなかったが、「(次回以降に)存続するか廃止するかという結論を出す」とも述べた。

2021年5月24日 朝日新聞デジタル「教員免許更新「廃止、次回以降に結論」中教審委トップ」

しかし、「見直し」ではなく、「廃止」の方向で動いていることが明らかになりました。

文部科学省は、教員免許に10年の有効期限を設け、更新の際に講習の受講を義務づける「教員免許更新制」を廃止する方針を固めた。政府関係者への取材で判明した。今夏にも廃止案を中央教育審議会に示し、来年の通常国会で廃止に必要な法改正を目指す。

2021年7月10日 Yahoo!ニュース「教員免許更新制廃止へ 文科省、来年の法改正目指す 安倍政権導入」

文科省は免許更新講習に代わる教員の資質向上策として、オンラインなどを通じた研修機能の強化や、教育委員会や大学などが提供するプログラムを集約する仕組みを整えるなどの検討が必要だとしています。中教審などの審議を踏まえ最終的に決定する見通しです。

今でこそ「廃止すべき」という意見が多い教員免許更新制度ですが、
この制度が導入されようとしていた頃の世論調査では、賛成意見が大半でした。

読売新聞の2005年の世論調査では、教員免許更新制度への賛成が89%
2年後の時事通信社の調査でも、79.4%が賛成

当時から教員はほとんどが制度に反対でしたが、「ゆとり教育」批判の機運もあり、世論は圧倒的に教員免許更新制度に賛成だったのです。

制度導入から11年で「廃止」の方向が出たのは、更新制度のデメリット

  • 費用も時間も教師も大きな負担になっている(30時間約3万円の講習の時間的負担と費用の自己負担)
  • 講習内容に対する不満(文科省の調査でも「役に立っている」と答えた教員が1/3)
  • 10年で免許が失効するため、産休・育休や療休の代替講師が見つからない
  • 定員割れの学校が多く、教師の仕事の負担増に拍車をかけている
  • 講習を受けた後の「うっかり失効」が相次ぐ

明らかになったことに加え、そのことが広く報道されたことにより、世論も「廃止すべき」というという方向に変わったことが大きいでしょう。

本当に廃止されるのなら嬉しいニュースですが、

  • 本当に「廃止」なのか(免許の期限は「無期限」なのか?手続きは必要なのか?)
  • 現在の更新講習に変わる研修制度はどうなるのか
  • 現在更新講習を行っている人の扱いはどうなるのか

などについて、これからも注意深く見ていく必要がありそうです。

参考: 2021年7月10日 Yahoo!ニュース「教員免許更新制廃止へ 文科省、来年の法改正目指す 安倍政権導入」




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