休校再開のサポートに教員を加配。310億円計上。問題点は?




新型コロナウイルスによる休校からの再開に当たり、授業の遅れを取り戻すため、政府は5月25日、最終学年の小6と中3が少人数の学級で学べるようにするため、公立小中学校に教員3100人を加配する方針を固めました。

学年を問わずに夏休みや放課後の補習などにあたる学習指導員を6万1200人、スクール・サポート・スタッフ2万600人も追加配置します。

小6と中3に3100人を加配

加配教員は、感染防止のための分散登校の際、小6と中3の学級を二つに分けるなどの指導に充てます。次年度への学習繰り越しができない最終学年小6と中3の授業時間を優先的に確保するための措置です。

3100人の補充先ですが、学校で働く教員志望の講師に臨時免許を与えたり、退職教員を活用したりすることを想定しています。

学習指導員を6万1200人配置

学習指導員は1校に2人程度を充てあて、担任教員を補助します。
本来は教育免許が必要ですが、資格要件を緩め、学習塾講師や大学生、NPOなどの教育関係者らを起用する予定です。
新型コロナウイルスの影響で教育実習が難しくなっているため、指導員の経験を実習の単位にすることができます。
時給は教員免許がある人で2600円、ない人で1600円。

スクール・サポート・スタッフを2万600人追加配置

授業準備や保護者への連絡などを補助するスクール・サポート・スタッフは1校1人程度を想定しています。時給1000円。
コロナ禍でアルバイト先を失った大学生らを主に想定しています。

予算は310億円

今年度2次補正予算案に関連経費約310億円を計上。感染者の多い地域を優先し、6月上旬にも配置が可能になります。

実現化可能性は?

この方針は実現できるのなら、休校のため授業が遅れている学校にとって大変助けになります。しかし、問題点はないのでしょうか

果たして人が集まるのか?

ここ数年、公立学校は大変な人手不足に苦しんでいます。教員採用試験の倍率は年々下がっています(2019年度の小学校の倍率の全国平均は2.8 倍)。
そのため、臨時的任用職員、非常勤講師も足りず、定員割れの学校が多くあります(昨年度は4月の段階で全国で1241件未配置)。
この傾向は年々強まっています。
現在の定員でさえ満たしていないのに、3100人もの加配がどこにいるのでしょうか。

教員・指導員の質は保てるのか?

また、仮に人が集まったとしても、教員・指導員の質が保てるのかが気になります。

  • 教員志望の講師に臨時免許
  • 退職教員を確保
  • 学習塾講師や大学生、NPOなどの教育関係者
  • 教育実習の代替

とありますが、経験の少ない人材が教育現場に入ることで混乱が起こることも予想されます。
授業を行うのに教員免許が必要なのは、それだけ教師の仕事には高い専門性が求められるからです。医療従事者が足りないからといって、学生や医療事務員、NPO職員等に医者や看護師の代替を依頼することはないはずです。

分散登校、三密を防ぎながらの授業が求められます。このような非常時だからこそイレギュラーな対応が多く出てくるはずです。そのような時に役に立つのが教師としての見識に基づくその場の判断です。

経験の少ない人材が研修も受けずに教育現場に多く入ることにより、逆に混乱が起きてしまうことが危惧されます。

参考:2020年5月26日 朝日新聞デジタル「教員3100人を加配へ 小6・中3の学習支援 学年問わぬ指導員ら8万人も 政府方針」




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