コロナ対策で疲れ果て困惑する「学校の新しい生活様式」の教師たち。どうしたらいい?




新型コロナウイルスによる一斉休校が終わり、授業が始まってから1ヶ月半ほど経ちました。
6月前半は分散登校、6月後半からは午前授業、7 月からは給食開始とともに通常時程という自治体が多いようです。
通常授業が始まったということから、学校はコロナ以前の生活を取り戻したと感じる方も多いでしょう。
しかし、実際には以前の学校生活とは異なる「コロナバージョン」の学校になっており、そのため教師の仕事もたたでさえ忙しい通常業務に加え、コロナ対策が加わり、大変多忙なものになっています。

毎日の検温と除菌

子供は家庭で健康観察表を記入し、毎日検温して登校することになっています。担任は校舎外で観察表を確認します。検温していない子、健康観察表を忘れた子は校舎に入ってはいけないので、それらの子供は校舎外で検温した後教室に行くのですが、かなりの手間です。

  • 検温用の人員を配置しないといけない
  • なるべく教室から離れた場所に検温の場所を用意しないといけない
  • 瞬時に体温が分かる非接触型の温度計は現在入手困難なので、数が確保できないため、一人一人の検温に時間がかかる
  • 担任は校舎外で健康観察表を一人一人チェックし、漏れがない子だけ校舎に入れるようにしないといけない。

これらの措置に10〜15分ほどかかります。全て勤務時間外の対応です。当然勤務時間外に働いても残業代も手当も出ません。

また、子供が帰った後の消毒作業もかなりの手間です。子供が使用する場所は教室のみならず特別教室、トイレ、水道とたくさんあるので、学校の少ない人員で消毒するのは大変です。だいたい1教室5〜10分ほどかかります。
特に分散登校中の、午前と午後に分かれて授業をしている時期は、その間に消毒作業を終わらせないといけないので、かなり過酷でした。
しかもその時期は午前中4時間午後4時間と8時間授業だったので、教師の疲労度はかなりのものでした。

参考:学校の消毒の様子(横浜市立永田台小学校)

密にならないという制約の中大急ぎで進める授業

2ヶ月の学習の遅れを取り戻すため、通常よりかなり早いペースで学習を進めています。授業について行けない子供へのフォローをしないといけないのですが、それも難しい状況です。
「三密を避ける」という制約で授業をする上でとても難しいのが、「前向きで離れて学習する」という学習形態が学習のバリエーションを奪うことです。
今年度から完全実施される新学習指導要領では、「主体的、対話的で深い学び」を重視しています。子供同士が互いに交流しながら学び合うことが望ましとされています。しかし、そのような学習形態は「密」を避けられません。
全員が前を向く一斉授業の形態を続けることは、新学習指導要領は想定していません。そして多様な学習形態をとれないことは子供の学習意欲を保つ上でも限界があります。
小学校でずっと一斉授業で子供の関心を引きつけることは、ベテランでもかなり難しいです。殊に約半数の教員が20代の若者で、経験が少ないという現状では、制約の多い中授業をせざるを得ない現状はかなりの困難です。

三密を避けながらの給食

7月から多くの学校で給食が始まりました。一般的には給食当番が配膳し、グループになって会食しますが、今は三密を避けるため、配膳は先生がする、または、一人一人自分が食べる分を配膳するという対応をしている学校が多いです。
グループにしないで前向きに食べることは、インフルエンザ流行期などにも行われることですが、会食の楽しみをかなり奪っています。普段は10人ほどの給食当番が行っている配膳をこのような形で行うのは配膳の時間がかかり(つまり食べる時間が減り)、特に低学年には大きな負担となります。

夏休みの短縮は教師の心理的、肉体的負担を増大させる

休校による学習の遅れを取り戻すため、殆どの自治体では夏休みが短縮されます。通常5〜6週間行われる夏休みが、今年は2週間のところが多いのです。
夏休み中も教師は休める訳ではないのですが、子供が通学せず教材研究や研修、事務処理行うことができる夏休みは心理的肉体的負担が少なく、定時に帰れる数少ない期間でもあります。
そのような期間が短縮されるということは、心理的肉体的負担を軽減する期間がなくなるのと同時に、指導要録や保健簿の整理など、事務処理の時間がなくなることでもあり、大変な負担増になります。

実現可能性の低い対策

文部科学省や自治体は、コロナ対策のため、追加予算を配当しています。そのような予算ですぐに検温できる温度計を購入する等の措置が必要でしょう。
また、文部科学省は教員3100人を加配、学習指導員を6万1200人、スクール・サポート・スタッフ2万600人も追加配置し、そのために310億円の予算を計上しています。

参考:休校再開のサポートに教員を加配。310億円計上。問題点は?

しかし、現状でも臨時的任用職員も非常勤講師も足りず、定員割れしている学校が多数ある中、この追加配置する人材はどこにいるのでしょう。いくら予算があっても、なり手がいなくては成立しません。

民間ができることは民間に

朝の検温、消毒等は教員でなくてもできる仕事です。自治体が警備会社や清掃会社と契約し、それらの仕事を代行してもらえだけで、教師の負担は大幅に減ります。

保護者や地域は大らかな目で学校を支えてほしい

小学校6年生の担任に聞いたところ

「一斉授業の形態をとらざるを得ないのが一番大変です。本当はグループで話合ったり、交流場面をつくったりしながら学習を進めたいのですが、それが許されていないからです。それでも『楽しい授業を』『学級経営をしっかり』と言われるとたまりません。
楽しい授業、主体的で活動的な授業を目指そうとすると、どうしても密になってしまいます。そのような学習形態をとったことが感染につながったのなら、学校は大変なバッシングに遭うでしょう。しかし、休み時間に友達と遊んでる様子などを見ると、学校はどんなに対策をしても蜜を避けられません。
もし、自分の学校から感染が出てしまったとしても、学校や教師を責めるのではなく、子供を安心させてほしいです。」


と語っていました。

コロナ対策が上手くいっていない学校に対して不満や不安を覚える保護者の方々、地域の方々も多くいると思います。しかし、このような制約の中、心も体も消耗しながら教師が働いていることを理解して欲しいのです。
学校に不満があるときは、クレームを言うのではなく「何かお手伝いできることはありますか」と言って頂けるととても助かります。
また、地域の方々も、検温、消毒など、手伝って頂けると助かることが学校にはたくさんあります。

学校・家庭・地域が協力しながら、この危機を一つ一つ乗り越えていきたいものです。

参考:2020年7月12日   AERAdot.「先生を追い詰めないために親ができること 元校長が子どもの保護者にしてほしい『3つのお願い』」

2020年7月6日 毎日新聞「学習遅れ、ストレス…コロナで制約、気配り増す教諭 『新しい生活様式』の教室はいま」




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