教員免許の国家資格化は教員希望者の増加と資質向上に繋がるのか




2020年6月8日の講演で、萩生田文部科学大臣は、「学校の先生こそ、本当は国家資格の方がいいのではないか」と述べ、教員免許を国家資格にすべきとの考えを示しました。

現在教員免許は各都道府県の教育委員会が交付しています。

なぜ国家資格にするのか

萩生田文部科学大臣はその理由として、「教員の仕事の魅力向上」を上げています。

「教員という職業が、若い人たちにとって魅力的な職業であり続けることが大事で、そのためには、やりがいを感じられる環境を作っていくことが必要だ」

2020年6月10日教育新聞「【読者投票】教員免許の国家資格化 賛成?」

そして、現状の10年更新の教員免許更新制度についても「ものすごく負担がかかっているのではないか」として、更新制度の簡略化の方向性を示しました。

教員免許を取得して10年後に講習を受けて免許を更新すれば、20年後と30年後には更新講習を受けなくて済むようにすべきだとの考えを示した。

2020年6月9日教員新聞「教員免許を国家資格に 更新講習も1回のみ、文科相表明」

教員免許を国家資格化する案は、5年前に自民党の教育再生実行本部が提言をまとめ政府に提出しています。

5月中旬に提出された教育再生実行本部の資料では、教師の質の向上を図るための対策として、現在は都道府県・政令指定都市ごとに異なっている教員採用試験を全国共通の試験にし、教員免許を国家資格にするという案を打ち出しています。

教育再生実行本部の案では、大学などで教職課程を履修したのち国家試験を受験、さらに1~2年程度の研修を受けることで教員免許を取得できるようにするとしています。医師免許取得のような流れを想定しているということです。

2015年9月24日「教員免許が国家資格に!?教育再生実行本部の提言をチェック!」

この案は「教員免許を国家資格にすることで資格の社会的価値を高め、なおかつ教員の質を向上させる」ねらいがあるとのことですが、果たして国家資格にすることで、社会的地位が高まり質が向上するのでしょうか。

大臣の事実誤認

萩生田文部科学大臣は国家資格化することのメリットとして次のように述べています。

「例えば、結婚して居住地が変わったとしても、子育てが一段落したら、また教員として働けるようにしたい。いまは都道府県単位の免許になっているので、前の県では先生をやっていたけれども、いま住んでいるところでは(免許の)取り直しをしないと先生ができないという不具合もある。1回免許を取れば、ずっと生涯使えるような仕組みを作ればどうか、というイメージを持っている」と説明。「これが教員のプライドにつながるのだったら、ぜひチャレンジをしてみたい」と語りました。

2020年6月10日教育新聞「【読者投票】教員免許の国家資格化 賛成?」

この大臣の発言は事実と異なります。教員免許は各都道府県教育委員会が交付しますが、その効力は全国共通なので、交付する都道府県と働く都道府県が異なっても大丈夫です。
例えるなら、運転免許証は、各都道府県公安委員会が交付しますが、全国一律に適用できることと同じです。
国家資格化しなくても別の地域で働くために取り直しをすることはありませんし、そのことで教員のプライドにつながることはありません。

国家資格化の2つの懸念

国家資格化することについてはいくつかの懸念があります

免許を取得するハードルが高くなる

現状で教員免許を取得する方法はいくつかありますが、一番一般的な方法は、大学で教員免許に必要な単位を取得し、大学から一括して教員免許取得を申請する方法です。
自民党教育再生実行本部の国家資格案は、「大学などで教職課程を履修したのち国家試験を受験、さらに1~2年程度の研修を受けることで教員免許を取得できるようにする」としています。医師免許取得のような流れを想定しているようです。
現在教員志望者の減少に伴い、教員採用試験の簡素化が各都道府県で進んでいます。この国家資格化の案だと、免許取得のハードルが高くなり、更なる免許取得者、教員希望者の減少につながる心配があります。

教員免許取得が政権の方針に左右される

現在は教員免許取得は、必要な単位を取得した後各都道府県教委が交付しています。
国家資格になるということは、政権の意図や方針が採用の条件に組み込まれる可能性があります。
戦後の教育は、戦争中に教育の反省から生まれ、教育委員会制度をはじめ、政治と教育とが一定の距離を置くことを重視していました。
国家資格になるということは、時の政権の方針や、政治的意図に応じて採用条件や求められる人材が代わる危惧があります。

優先して取り組むことがあるのでは

萩生田文部科学大臣は、教員免許更新制度について、次のように述べました。

教員免許の更新講習に「ものすごく負担がかかっているのではないか」として、教員免許を取得して10年後に講習を受けて免許を更新すれば、20年後と30年後には更新講習を受けなくて済むようにすべきだとの考えを示した。

2020年6月9日教員新聞「教員免許を国家資格に 更新講習も1回のみ、文科相表明」

10年ごとに免許を更新しなければいけない現状の制度が、教師の負担増になり、教員不足や魅力の低下に繋がっていることは確かです。教員免許更新制度の見直しは急務です。
しかし、見直すのなら、更新講習は全廃した方がいいという考えの方が強くあります。そして、更新制度の見直しと国家資格化は関係ありません。

教員の魅力向上、志望者増加を国家資格化に求めるのではなく、

  • 定数法を改正し、1クラス辺りの子どもの数を減らしたり、先生の人数を増やしたりする
  • 給特法を改正し、残業代が出るようにする
  • 働き方改革を進め、授業に専念できるようにする
  • 外部人材を多く取り入れる

等の改革を進めた方が、よほど有効なのではないでしょうか。




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