「非常勤講師」が「会計年度任用職員」になると、何が変わるのか




2020年(令和2年)4月1日より、地方公務員法が改正され、今までの「非常勤講師」は「会計年度任用職員」になります。

なぜ法改正がされたのか、会計年度任用職員になると何が変わるのか、この記事では解説していきます。

会計年度任用職員とは

「会計年度」とは「4月1日〜3月31日」という意味です。
言葉の意味は「4月1日〜3月31日までの1年間任用される職員」という意味になります。

「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律」が成立し、平成29年5月17日に公布されました。改正の理由ですが、公務員にも非正規職員が増え、その実態と正規採用を前提としているこれまでの地方公務員法とが合わなくなったからです。

公務員にも非正規職員が増えてきたのは教員に限らず一般の公務員も同様です。

自治体においては、職員定数の枠や財政上等の理由などから、任用の法的な根拠があいまいなままに、臨時職員・非常勤職員が増加し、平成28年4月1日現在、全国の自治体で、事務補助職員(約10万人)や教員・講師(約9万人)、保育士(約6万人)等として約64万3千人が勤務しているとのことです。そして、どの自治体においても、役所の職務遂行上、欠かせない戦力になっているという実態がありました。

「会計年度任用職員」は共済組合の組合員となるのか?-地方公務員法の改正と共済組合の関係について- より

地方公務員法は正規採用されていることを前提にしていたため、非正規職員の法律上の根拠はこれまで曖昧でした。そのため自治体によって待遇に大きな差があります。

例えば

  • 非常勤職員がボーナスをもらっている自治体もあれば、もらってない自治体もある。
  • 週4勤務で早上がりの非常勤職員もいれば、週5勤務でフルタイム労働の非常勤職員もいる。
  • 採用試験を実施している自治体もあれば、採用試験がない自治体もある。
  • 正規職員と同様の働きをしているにも関わらす、給与が違いボーナスも出ない

などです。

また、非正規職員の任用の法的な位置づけも、自治体によって「特別職非常勤職員」「一般職非常勤職員」「臨時的任用職員」どの職で任用するのかが曖昧かつ統一されていませんでした。これまでの地方公務員法は非正規が状態化することを想定していなかったからです。

今回の法改正では、「特別職」の任用や「臨時的任用」を厳格化するとともに、一般職の非常勤職員の任用等に関する制度を明確化する、ということが総務省の「法律案の概要」に記されています。

1.適正な任用等を確保
地方の厳しい財政状況が続く中、多様化する行政需要に対応するため、臨時・非常勤職員が増加(⑰45.6万人→⑳49.8万人→㉔59.9万人→㉘64.5万人)しているが、任用制度の趣旨に沿わない運用が見られ、適正な任用が確保されていないことから、以下の改正を行う。
特別職の任用及び臨時的任用の厳格化
「特別職」を「専門的な知識経験等に基づき、助言、調査等を行う者」に厳格化
一般職の非常勤職員の任用等に関する制度の明確化
「臨時的任用」を「常勤職員に欠員を生じた場合」に厳格化

2.会計年度任用職員に対する給付を規定
地方の非常勤職員については、国と異なり、労働者性が高い者であっても期末手当が支給できないため、上記の適正な任用等の確保に伴い、以下の改正を行う。
会計年度任用職員について、期末手当の支給が可能となるよう、給付に
関する規定を整備する。

総務省「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案の概要」

一般職の非常勤職員の任用等に関する制度の明確化のために、「会計年度任用職員」を創設したととらえることができます。

現行法での非正規職員の位置づけが、改正後はどのようになるかは、以下の図をご覧ください。

会計年度任用職員には2種類ある

上記の図にあるように、会計年度任用職員には2種類あります。

  1. パートタイムの会計年度任用職員(週38時間45分未満)
  2. フルタイムの会計年度任用職員(週38時間45分)

今まで法的に任用の根拠が曖昧だったフルタイムの非正規職員が法的に根拠のあるものになりました。
総務省は、「会計年度任用職員」制度について、「非正規公務員を法律に規定することでその位置づけを明確にし、待遇改善を図るもの」と説明しています。そして国会答弁や付帯決議で、「法の趣旨は待遇改善であり、不利益変更はしない」と確認されました。

給与についても「類似の職務に従事する常勤職員の給料表に紐付けた上で上限を決定する」としています。
つまり「同一労働同一賃金」を目指すということです。

そして、「ボーナス(期末手当)」を支給できるようにもなります。

会計年度任用職員の問題点は

では、この制度に問題点はないのでしょうか。
一番心配されていることは、「法改正の趣旨通り運用されるのか」ということです。
本来でしたら、この法改正は、非正規職員の待遇改善や雇用の安定につながるはずです。しかし、その趣旨に沿ってフルタイム化したり、賞与を出したりするには人件費の上積みが不可欠になります。それがはっきりしない中で一人当たりの人件費が増えるなら、人数や労働時間、月額の削減で対応することになります。
つまり、今までフルタイムで雇用していた人をパートタイムで雇用するなどして、人件費を抑えられる可能性もあるのです。

教員の場合はどうなるのか

教員の場合、
これまでの「臨時的任用職員」は、法改正後も「臨時的任用職員」のままです(会計年度任用職員の「フルタイム」にはなりません)。実態は変わりません。


これまでの非常勤講師が「会計年度任用職員(パートタイム)」になります。
非常勤講師が「会計年度任用職員」に変わるメリットとデメリットは、次の通りです。

メリット

雇用(任用)の安定

今まで「非常勤講師」は、辞令の範囲内でしか任用されてなかったので、任用期間が終わってしまうと、職を失ってしまいました。
しかし、会計年度任用職員になると、「4月1日〜3月31日」までの任用になるので、1年間は安定して任用されることになります。

給与や待遇の改善

これまで長期休業など授業がない期間は、給与が出ませんでしたが、これからは長期休業中も給与が出せることになります。また、今までは出なかったボーナス(期末手当)も出せるようになります(「支給が可能になる」ということなので、実際に期末手当が支給されるか、支給の条件がどうなるかは自治体によります)。

デメリット

「地方公務員」になることによる制限が増えます。

これまで、「非常勤講師」の身分は、地方公務員法第3条3項3号の「特別職非常勤職員」の「非常勤の嘱託員」でした。
そして第4条2項に「この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない」とありました。
つまり、これまで非常勤講師は地方公務員法の適用対象外だったのです。

会計年度任用職員になると、「地方公務員」の適用範囲内になるので、地方公務員に課せられる様々な義務が発生することになります。
総務省の「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について」には、次のように記されています。

服務及び懲役
・服務の根本基準(新地方公務員法第30条)
・ 服務の宣誓(新地方公務員法第31条)
・ 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(新地方公務員法第32条)
・ 信用失墜行為の禁止(新地方公務員法第33条)
・ 秘密を守る義務(新地方公務員法第34条)
・ 職務に専念する義務(新地方公務員法第35条)
・ 政治的行為の制限(新地方公務員法第36条)
・ 争議行為等の禁止(新地方公務員法第37条)
営利企業への従事等の制限(新地方公務員法第38条)

副業はこれまで通りOK

「公務員は副業(兼業)禁止」であることは、上記のように新設された「会計年度任用職員」にも適用されます。今まで非常勤講師の副業については無条件で大丈夫だったのですが、法改正と共に禁止になったようにも読めます。
しかし、副業(兼業)禁止なのは、「フルタイムの会計年度任用職員」です。
非常勤講師は「パートタイムの会計年度任用職員」に移行することになります。
総務省のマニュアルには、次のように記されています。

パートタイムの会計年度任用職員については、営利企業への従事等の制限の対象外としましたが、職務専念義務や信用失墜行為の禁止等の服務規律が適用となることに留意ください。なお、勤務時間の長短にかかわらず、パートタイムの会計年度任用職員に対し、営利企業への従事等を一律に禁止することは適切ではありませんが、例えば、職務専念義務に支障を来すような長時間労働を行わないよう指導することなどは考えられます。

今までとは違い、職務専念義務が課せられますが、副業や兼業はOKと明記されています。

東京都の「時間講師の変更に関するよくあるお問い合わせ」には、次のように記されています。

時間講師以外にも別の職に就いていますが、兼業は禁止になるのですか?

○令和2年度以降も、東京都の時間講師以外の職に従事することは可能です。その際は、届出が必要になります。

兼業の届出はいつどのようにすればよいのでしょうか。
勤務する学校が決まってから、その学校に届け出る形式になるのでしょうか。

○勤務する学校が決まってから、その学校に届け出てください。
複数の学校に勤務している場合は、各学校に届け出てください。
届出様式は現在作成中です。来年度勤務する学校から配布します。

おそらく他の自治体も、このような形になるのではと予想されます。

まとめ

非常勤講師が会計年度任用職員(パートタイム)に移行すると、

・長期休暇中の任用や、期末手当の支給など、待遇がよくなる
・地方公務員としての義務が発生する
・副業(兼業)は許可制になる。

ということになります。
法の趣旨通りに運用されれば、待遇改善につながります。
正しく運用されるようになるか、注意深く見守る必要がありそうです。




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