30人学級、教員5万人増で10年後実現は本当に可能か?




30人学級は学校現場も教職員団体も長年要求していましたが、財務省の反対もあり、実現はほど遠い状況でした。
しかし、2020年9月24日の教育新聞によると、30人学級要望の声が自民党から上がったとの報道がありました。

自民党の教育再生実行本部(本部長・馳浩元文科相)は9月24日、義務教育段階の1学級の人数を「30人」とした少人数学級の取り組みを、段階的・計画的に進めるべきとする提言を、萩生田光一文科相に申し入れた。

2020年9月24日 教育新聞「30人学級、10年後実現で教員5万人増必要 文科省試算」

1クラスの児童・生徒数や教職員定数は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(義務教育標準法)で定められています。
この法律で1クラスの児童・生徒数は40名(小学校1年生は35名)と定められています。
1学校における先生(副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、助教諭及び講師)の定員は学校規模によって違うのですが、これも法律で定められています。

義務標準法第三条2項

学校での先生(副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、助教諭及び講師)の定員は、学校規模によって違うのですが、小学校1学年3クラス、中学校1学年6クラス(計18クラス)を例に挙げると

  • 小学校・・・学級数×1.200倍=21.6人→22人
  • 中学校・・・学級数×1.557倍=28.026人→29人

つまり、副校長、教頭を除くと、担任以外の先生は、小学校は3人、中学校は10人になります。
この定員により、中学校では2クラスに1名副担任を置くことができるが、小学校は児童支援専任、音楽・家庭科等の専科に充てると副担任が置けないことも、少人数指導を行うことが難しいのもお分かりになると思います。

コロナ禍を受け、小中学校の少人数学級を求める声は高まっている。今月には政府の教育再生実行会議のワーキンググループが「予算編成の過程において丁寧に検討することを期待する」との合意文書をまとめ、自民党の教育再生実行本部も「30人学級の推進」を求める決議をまとめた。

2020年9月29日 朝日新聞「30人学級、10年かけて移行すれば対応可能? 文科省」

現状の40人以下学級を30人以下学級にするには、単純計算で8〜9万人の教員増が必要です。

しかし、文科省は特別な予算配置をしなくても、10年後には実現すると言っています。

文科省の担当官から「今すぐに30人学級を実現するには8万~9万人の教員増が必要だが、10年かけて実現するとすれば、その間に児童生徒数には100万人ほどの自然減があり、必要な教員増は5万人程度にとどまる」との試算が示された。

2020年9月24日 教育新聞「30人学級、10年後実現で教員5万人増必要 文科省試算」

義務教育標準法が規定する学級の人数の標準は小1で35人以下、小2~中3で40人以下。これを30人以下とした場合の試算では、今後10年間で公立小中学校の児童生徒は約100万人減り、それに伴い教員定数も減って約5万人の余剰人員が生じる。これに加えて、少人数指導や複数の教員による「チーム・ティーチング」などのためにすでに小中学校に追加配置している約3万人を活用すれば、実現が可能という。

萩生田光一文科相は29日の閣議後会見で、試算について「毎年度新たに必要となる教職員定数は小さく、大きな財政負担はなく実現が可能だ」と述べ、財務省と議論しながら、少人数学級の実現をめざす考えを示した。

2020年9月29日 朝日新聞「30人学級、10年かけて移行すれば対応可能? 文科省」

文部科学省は、「少人数学級のために約5万人の人員が必要だが、ティームティーチング(TT)等のために既に追加配置(加配)されている約3万人を活用すれば実現可能」と言っていますが、本当でしょうか。
現状でも、国によるTTの加配や、自治体独自の加配により、義務教育標準法に定められた定員より1〜2名多く配置されることになっています。
しかし、この加配だけでは、現在の多様化、複雑化された学校現場に対応することが難しく、「人材不足が」常に叫ばれています。現状の加配では足りないのです。
実際、この加配の人員を担任に回したら、少人数指導や専科が成立しなくなります。


そして、教員希望者の減少、産休・育休取得者の増加、療休取得者の増加のため臨時的任用職員(臨任)・非常勤講師の需要が高まっているにもかかわらず、それらのなり手が見つからないため、定員割れの学校が続出しています。

つまり、現状でも人材不足が甚だしく、教員希望の学生も減っているのに、10年後自然に少人数学級実現の人員が確保できるという見通しは甘すぎるのです。

働き方改革をより一層進め、若者の職業選択に「教員」が魅力的になるようにする、臨任・非常勤の待遇改善をする、副業として教師をするハードルを下げる等の施策に予算をかけ、あらゆる手段を使って人員を確保しなければ、30人以下学級の実現は難しいでしょう。

参考:2020年9月24日 教育新聞「30人学級、10年後実現で教員5万人増必要 文科省試算」
2020年9月29日 朝日新聞「30人学級、10年かけて移行すれば対応可能? 文科省」




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