教師が副業で処分?!今こそ教師も副業を




教師が副業で処分のニュースの増加

 最近、「教師(教師、教員)が副業で処分」というニュースを多く見かけます。

副業で不動産、教諭減給 仙台市

SNS駆使した「副業先生」、減給処分に…有料の恋愛相談、コラム執筆で「160万円」稼ぐ

中学教員、副業で料理配達して停職処分 140万円稼ぐ

同人誌販売し利益175万円 県内教諭を処分 地方公務員法違反

処分内容は次のようになっています。

自治体副業内容期間処分
仙台市不動産賃貸業1998年〜2018年減給1/10(2ヶ月)
新潟県SNSを通して電話相談、コラム執筆2019年〜2020年 減給4ヶ月
横浜市食事の配達員2019年〜2020年停職6ヶ月
横浜市塾講師2019年〜2020年減給1/10(6カ月)
高知市同人誌販売2013年〜2020年戒告

 横浜市の「食事の配達員」は、おそらくUberEatsや出前館などのサービスでしょうが、他の不祥事や他の自治体との比較で考えても、処分が重すぎだと感じます。猥褻や体罰でも、ここまで重い処分は出ません。

 副業解禁が増え、それどころか副業推進の企業も現れています。地方公務員の副業解禁に踏み切る自治体も出ています。
 そのような今日的な傾向に逆行するような教育界の傾向です。

なぜ教育公務員は副業禁止なのか

 「公務員は副業禁止」ということを知っている方は多いと思いますが、その理由を知っている方は多くないかもしれません。

「地方公務員法」には、以下のように記載されています。

(営利企業への従事等の制限)
第三十八条
1
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない

人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。

地方公務員法

教育公務員の場合は、「地方公務員法」に加え、「教育公務員特例法」も適用されます。

(兼職及び他の事業等の従事)
第十七条
教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十七条第一項に規定する県費負担教職員については、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会。第二十三条第二項及び第二十四条第二項において同じ。)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる

前項の場合においては、地方公務員法第三十八条第二項の規定により人事委員会が定める許可の基準によることを要しない。

教育公務員特例法

 公務員の場合、「副業禁止」なのではなく、「許可を得なければ副業してはいけない」ということになります。
そして、教育公務員の場合は「本業に支障がないと認められた場合、副業することができる」のです。

つまり

  • 「営利を目的とする私企業」の役員になること
  • 「自ら営利企業を営む」こと
  • 「報酬を得て」事業や事務に従事すること

が、禁止されているのです。

どのような場合、副業が許可されるのか

 上記の処分は、「副業の申請をしていない」ので処分されたのです。しかし、申請したとしても「申請しても許可されないだろうから、無許可で行った」可能性も大きいです。

 実際「本業に支障がない」と副業が認められる場合は少なく、かなり制限が加えられます。

 許可の基準は自治体によって違うのですが、概ね

  • 職務遂行に支障を及ぼさない
  • 職務の公正な遂行に支障を及ぼさない
  • 公務員として不適切でない

ことが条件になります。そして、「不適切ではない」とは

  • 信用失墜行為の禁止
  • 守秘義務
  • 職務専念義務

に抵触しない、ということになります。

地方公務員法
(信用失墜行為の禁止)第三十三条
職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(秘密を守る義務)第三十四条
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
(職務に専念する義務)第三十五条
職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

地方公務員法

教員副業許可の具体例

 「信用失墜行為」にならず、「職務専念義務違反」にならない前提なので、自ずと「本業に直接関連する」仕事になります。

 具体的には、許可を得れば可能なものは、

  • 地域貢献活動(消防団や社会性・公共性の高いNPOなど)
  • 不動産投資(小規模な場合)
  • 執筆活動(信用が損なわれない、職務に支障がないもの)
  • 講演(公務に悪影響がないこと)

です。

 また、株式などの資産運用は問題ありません(しかし、これらの事業で利益が出た場合、確定申告しなければ脱税になります)。

教師の副業禁止は時代遅れでは?

 実際、副業によって多くの報酬を得るには大変です。教員の仕事の延長としての執筆活動や講演を除くと、処分のリスクを冒してまで取り組むことではないでしょうし、教師を辞めて別の事業に就いたり興したりするのはリスクが大きいです。

 しかし、近年の深刻な教員不足から、殆どの自治体で教員採用試験の年齢制限を撤廃しています。そして転職して教師になる人材を求める自治体も増えています。
しかし、これだけ「教員の仕事が大変」と言われている中、現在の職を辞めて教員になろうという人材がどれだけいるのでしょうか。

 また、「教師は学校しか知らないので世間知らず、社会のことを知らない」ともよく言われています。民間企業に一定期間派遣される制度もありますが、その制度が適用される教員はごく一部です。

・民間企業や法人で働いている人が副業として教員をする
・教育公務員が副業として民間企業に従事する

ことは、

  • 多様な経験や価値観をもつ人が教育現場に入ることにより、活性化する
  • 教員が社会の仕組みや価値観を知る
  • 教員不足を解消する

ことに繋がります。

非常勤講師(会計年度任用職員)の場合、上記の法規制は当てはまらないので、副業は問題なく行えます

教育に新しい働き方や多様な価値観をもたらすためにも、公務員の身分のまま、副業ができるよう、法改正が求められます。





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