1月は睦月で1月から春って本当?国語にも役立つ季節と暦の関係について




今の国語の教科書では季節の言葉について学年に応じて学びます。
季節の行事や遊び、昔の月の言い方などです。
そこで、「1月は睦月、12月は師走」「節分」「八十八夜」「十五夜」「立春」などの言葉も学ぶのです。

学年単 元内 容
1日づけとよう日月日や曜日の言い方と月ごとのできごと
2きせつのことば動植物を中心に、季節を感じるもの
3きせつの言葉生活の中で季節を感じるもの
4季節の言葉昔の月の言い方、季節を感じる行事
5季節の言葉徒然草、気象に関する言葉く
6季節の言葉二十四節
光村図書 小学校教科書「国語」より


昔から伝わる季節の言葉は日本人の季節感や情緒と深く結びついているので、とても大切です。しかし、昔の言葉を今に直接結びつけてしまうと、混乱の元にもなってしまいます。

ここでは、教科書の内容から少し踏み込んだ内容を話したいと思います。小学校での指導や、ご家庭でのお子さんへのお話に活用していただけたら嬉しいです。

昔の暦は月の動きが元。今と約1か月ずれている

子どもは

「昔の言い方だと1月が睦月・・・・12月が師走」
「今は3月〜5月が春・・・・12月〜2月が冬だけど、昔は1〜3月が春・・・10月〜12月が冬」

と知ると

「じゃあ今は1月だから、昔の言い方だと睦月だね」
「1月から3月が春って、全然春っぽくないね」
「季節がずれてるのかな?」


と思いがちです。しかし、

暦には太陽暦と太陰暦があります。昔の暦は太陰暦、今の暦は太陽暦です。

太陽暦太陰暦(太陰太陽暦)
基準太陽の周りを地球が1周する日数
地球が太陽を1周すると1年
月の満ち欠け
新月から新月が1ヶ月
1ヶ月30日か31日。2月は28日29.5日(29日か30日)
1年3365.2422日354日(29.5×12)
ずれの修正4年に1度うるう年(1年が366日)3年に1度うるう月

太陰暦は月の満ち欠けを元にした暦です。

1日は新月、3日は三日月、15日は満月(15夜)となり、月の満ち欠けと日にちが連動しています。

6年理科「月と太陽」の学習と関連づけると理解しやすいですね

しかし、1 年が354日ですので、1年に11日ほど太陽の動きと暦がずれてしまいます。そこで3年に1度うるう月を設け、季節(太陽)とのずれを調整します。これを太陰太陽暦と言います。

そして、太陽暦と太陰太陽暦の暦は「1年の始まり」が1〜2ヶ月ずれるので、「太陰暦の1月」は「今の2月くらい」になります。旧正月が大体2月になるのは、この理由からです。
つまり、昔は1月(睦月)〜3月(弥生)が春というのは、今だと2月〜4月に当たるのです。

日本では、明治6年(1873年)に太陽暦(グレゴリオ暦)に変わりました、それ以前に使われていた太陰太陽暦のことを「旧暦」とも言います。

今の暦と昔の暦を対応させると、概ね次のようになります。

今の暦季節昔の暦季節
1月師走(しわす)12月
2月睦月(むつき) 1月
3月如月(きさらぎ)2月
4月弥生(やよい)3月
5月卯月(うづき)4月
6月皐月(さつき)5月
7月水無月(みなづき)6月
8月文月(ふみづき)7月
9月葉月(はづき)8月
10月長月(ながつき)9月
11月神奈月(かんなづき)10月
12月霜月(しもつき)11月

節分は年に4回

節分は大体2月3日が多いです(2021年は124年ぶりに2月2日が節分でした)。
節分は立春の日の前日。文字通り「季かれ目」。つまり立春の日から「春」という訳です。
だから、季節が4つあるように、節分も本来は年に4回あります。
(立春、立夏、立秋、立冬の前日)
春の訪れである立春は1年の始まりでもあり、とくに待ち望まれていました。徐々にこの考えが強まり、立春の前日だけを節分と呼ぶことになったのが現代の節分の由来だといわれています。

旧暦は月の動きだけど、二十四節気は太陽の動き

ここでややこしいのは、「昔の暦は月の動き」だということは多く知られているのでずか、やはり昔から伝わる季節の表し方である「立春」「春分」などの二十四節気は「太陽の動き」だということです。


二十四節気は中国戦国時代の頃、太陰暦季節からのずれとは無関係に、季節を春夏秋冬の4等区分する暦のようなものとして考案された区分手法のひとつで、一年を12の「節気」(正節とも)と12の「中気」に分類し、それらに季節を表す名前がつけられている。

wikipediaより

二十四節気を全部覚えるのは大変ですが、小学生でしたら(一般常識としては)そのうちの8つは知っておきたいです。

主な
二十四節気
意味時期季節
立春春の始まり(冬至と春分の間)2月上旬
春分昼と夜がほぼ同じ3月下旬
立夏夏の始まり(春分と夏至の間)5月上旬
夏至昼が1番長い6月下旬
立秋秋の始まり(夏至と秋分の間)8月上旬
秋分昼と夜がほぼ同じ9月下旬
立冬冬の始まり(秋分と冬至の間)11月上旬
冬至夜が1番長い12月下旬

この二十四節気を元にした暦を「節月」と言います。
節月だと、「立春と雨月が正月(1月)」「啓蟄と春分が2月」・・・・となり、正月(1月)の始まりが立春となります。

立春から春だけど正月ではない

先ほど、「旧暦睦月から春」、「節分の次の日の春分から春」と書きました。そうすると「春分の日が睦月の始まりでお正月」と思ってしまうかもしれません。

しかし、「旧暦は月の動き」「節月(二十四節気)は太陽の動き」と示したように、この2つの暦にはズレがあるのです。

2021年で例えると、この年の旧正月(睦月の始まり)は2月12日、立春は2月3日です。つまり、旧暦の師走(師走まで冬)に春が始まるということです。ややこしいですね。

2017年の場合、旧正月は1月28日、立春は2月4日でしたので、睦月の始まり(旧正月)の後に立春が来たのです。

ちなみに、旧正月と立春がは約30年に1度重なり、そのことを「朔旦立春」「立春正月」と呼びます。次は2038年です。


日本には昔から伝わる季節を表す言葉は「旧暦」と「二十四節気(節月」の2つの暦から来ています。この2つはそれぞれ仕組みと成り立ちが違うため、ズレが生じます。

現在の感覚だと分かりにくく感じてしまいますが、
昔の人は月の満ち欠けを元にした、日にちの変化がわかりやすい「旧暦」と、
太陽の動きを元にした、季節の変化がわかりやすい、農業に適した「二十四節気(節月)」という2つの暦を適切に使い分けていたのです。


このことを理解しながら、子どもの発達段階に応じて説明したり教えたりできたらいいですね。




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