子どもたちの前に出てきた緑の巨大な実。細長いけど、きゅうりと比べたら大きすぎる。長さはおよそ80cmほど。表面はさらさらしていてゴーヤとは違う。それに重い。先端には茎のような突起がついている。
子どもたちの最初の反応は
うわ!でかい!
目次
5年理科「花から実へ」の導入
この実の正体は、「ヘチマ」です。学校で育てているヘチマが夏休み中に大きく育ちました。理科の単元の「花から実へ」の導入です。
まずは、みんなでiPadを片手にヘチマの畑に観察に出かけることにしました。校庭の片隅にあるヘチマ畑は、サッカーゴールのような支柱にヘチマとゴーヤがごちゃごちゃに育っていて、緑の小屋のようになっています。その小屋の天井から大きなヘチマが何本もぶら下がっていました。
ロイロノートに教科書で紹介されている雄花や雌花、おしべ、めしべの資料を入れておいたので、子どもたちは、その資料と観察している花を比べて雄花や雌花を探していました。見つけるとロイロノートのカメラで撮影して保存していました。
しかし、探しても探しても雌花が見つかりません。雄花ばかりです。天井方を見上げると、花のくきが明らかに雄花よりも太い花がありました。太い部分は、実になるところです。雌花を見つけました。子どもたちは空に向けてiPadで撮影し、拡大して雌花を確認しました。
しかし、残念なことに、距離があるのでめしべの様子をよく見ることができませんでした。めしべについては、またの機会になりました。
ペアトークで深める
教室に戻って観察して分かったことと問いづくりをしました。一人一人がノートにまとめていきます。「問いを考える」こともだいぶ上達しました。ノートに書いたことをもとにペアトークをしました。話し手と聞き手に分かれて一人5分くらい話したら交代です。ロイロノートで撮影した写真に書き込みながら分かったことを説明していました。問いについてはお互いに予想して楽しんでいました。
トゲトゲボンボンはなんだろう?
全体共有すると、雄花の近くにある
トゲトゲボンボンは一体なんだろう?
という問いが多く出ました。
「種が入ってると思う。」
「実だと思う。」
「花粉が入っているんだよ。」
「花だと思う。」
といろいろな予想が立ちました。予想に対して議論したかったのですが、時間もあまりなかったので、百聞は一見にしかず、トゲトゲボンボンを解剖することにしました。もう一度、畑に向かうので、時間がもったいないと思い、こちらから
「花粉も顕微鏡で見てみよう。」
と話を振ってしまいました。分散登校で授業の進度が落ちているというは言い訳ですが、子どもたちからしたら「なんで??でも、面白そうだからいいかな。」みたいな感じになっていたと思います。ちょっと焦りすぎました。
トゲトゲボンボンの解剖
もう一度、畑に出かけて、トゲトゲボンボンと花粉を採取しました。トゲトゲボンボンを解剖してみると、中身は、黄色いものが詰まっていました。丁寧に広げてみると、花びらが入っていました。一番割合を占めていたものは、脳みそのようなうねうねした形の黄色いものです。花びらがあったので、これはおしべだということが分かりました。
つまり、トゲトゲボンボンは、つぼみだということが分かりました。花粉の方も一人一台の顕微鏡で観察しました。何百何千という黄色い粒が観察できました。倍率を挙げると黄色い粒の中央にくぼみが見えました。子どもたちは顕微鏡の接眼レンズにiPadのカメラをつけてベストショットを撮影しています。観察したものをロイロノートに撮りためていきました。この日は、ここまで。
自分の問いをもとに調べ学習
次の授業からは、探究発表会に向けて、自分の問いをもとに調べ学習をします。
- 教科書
- 本
- インターネット
- 観察
- 実験
などを繰り返し※探究のサイクルを回していけるようにします。
ロイロノートは、個人の探究のポートフォリオを作るのに非常に便利です。これまでは、観察したことをノートやクリアファイルにためていきましたが、不便なところがありました。今回のように観察した結果を撮影したり、本で自分の探究にあったページを撮影しておいたり、NHK for schoolの動画をスクリーンショットしたりと資料をどんどん一つのノートにためていけます。
プレゼンを作るときは、その資料を整理して活用できるので、これまで画用紙で準備していたときと比べて手軽になりました。全てロイロノートで完結できますが、分かったことや問い、考えたことなどは、記述の量が多いのでノートに書かせています。タイピングスピードが上がりましたが、それでもノートに書く方が圧倒的に速いです。デジタルとアナログのよい部分を考えて授業に取り組んでいます。
※探究のサイクル
- 問い
- 予想
- 調べる
- 結果
- 考察・まとめ
- 次の問い
問いづくりに「優れた読書家の技」
探究のサイクルの最初のステップの問いづくりでつまづく子が多いです。観察も調べ学習もしていない状態、つまり知識があまりない状態では、探究する価値があるような深い問いをつくるのが難しいからです。それに問いをつくってもその答えを探そうとすると、そこばかりに目がいってしまい、他の大切な情報を読み飛ばしてしまう子もいます。
そこで、読書家の時間で使っている「優れた読書家の技」を応用することにしました。詳しくは、下記に載せました。探究のサイクルを1〜6までを行ったり来たりする感じになります。ある程度、学習が進んだら学んだことを探究のサイクルごとに整理して発表できるようにします。また、受粉の実験など、全体で取り上げるべき学習内容については、ミニレッスンなどで取り扱おうと考えています。
優れた読書家の技
1 つなげる
・似たようなことがあるんだけど・・・
・ほかに読んだ本でね・・・・
・これって、テレビで見たことがある〜〜と似ている。
2 質問する
・どうして〜〜なのかなあ?
・〜〜が不思議だなあ・・・
3 思い直す
・こう思っていたけど、調べてみると違った
・初めて知った!
・予想は〜だったけど、違った。なぜ違ったのだろう?
・話し合いで、自分の間違いに気づいた。そういうことだったのか?
4 大事なこと見つけ
・なぜ、ここが大切かというと
今後の探究活動が楽しみ
雄花が多いのは、トゲボンボンがたくさんついてるからだよ!
と子どもたちが話していましたが、ある子が調べてみると、雌花の開花時期が雄花よりも遅いことが分かりました。ある程度、気温が下がらないと多くは咲かないようです。
私も毎朝、ヘチマの観察をしているのですが、その発見通り、夏休み明けよりも、雌花のつぼみを多くみるようになりました。雌花の観察がよくできそうです。分散登校が早く明けてくれないかなあ。
※この記事は、小学校教諭「イマシュン」さんの投稿です。
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