学校も脱はんこ。でも脱はんこより重要なのは・・・




文部科学省は2020年10月20日、学校と保護者のやりとりで使われる押印や連絡手段のデジタル化を進めるよう、全国の教育委員会などに通知しました。

2020年10月20日文部科学省通知

通知の意味は

学校から保護者に通知をする場合は、プリントを作成し子どもを通して家庭に配布。その返信に署名・捺印を求めることが殆どでした。例えば

  • 家庭訪問や個人面談の申し込み
  • 水泳学習承諾書
  • 夏季水泳教室参加申し込み
  • 校外学習参加の申し込み
  • 授業支援ボランティアの申し込み
  • 個人情報保護の通知

などです。
音読カードの宿題も、保護者が確認した証拠に捺印欄があることが多いです。

この通知は「これらの捺印を止めよう」というより、「連絡手段のデジタル化」を進める、という通知です。

押印の省略や学校・保護者等間における連絡手段のデジタル化を進めることは、迅速な情報共有を実現するとともに、学校・保護者等双方の負担軽減にも大きく寄与するものであるため、教育委員会等においては、学校が円滑にデジタル化等に移行できるよう、必要な支援をお願いいたします。また、教育委員会等において、学校が求める保護者等による押印手続き等について教育委員会規則やガイドライン等で定めている場合には、本通知を踏まえ、必要に応じて見直しを進めていただきますようお願いいたします。

2020年10月20日文部科学省通知

例えば、欠席等保護者から学校への連絡も、連絡帳に記入し、兄弟や近所の子どもを通してやりとりする場合がほとんどです。今世の中で一般的な、メールやラインを使っての連絡、登録フォームに入力しての通知等は全く行われてはいませんでした。

この通知は、今までプリントや連絡帳で行われていた学校・保護者間の連絡を、デジタルデバイスを通して行うことを促すものです。
単に今までの紙での連絡から、捺印欄をなくすだけなら、全く意味はありません。

なぜ当たり前のことができなかったのか

スマホ一つで何でもできる現代社会において、手渡し+捺印を求める学校の連絡手段は、通信手段が電話しかなく、電話が混み合うことを避けたかった昭和の時代ならともかく、令和とは思えません。

学校の連絡手段が平成以下なのには、次のような要因があります。

変化を恐れる学校の体質

コラム「なぜ学校は横並び意識が強く、変化を恐れるのか」にも書きましたが、

  • クレームを恐れる
  • 上意下達が当たり前で思考停止している
  • 前例踏襲主義

が、学校の(特に管理職の)文化や思考として、はびこっているからです。


例えば、学校行事の写真を購入する際、ここ数年やっとネット上で購入できるようになりましたが、たった数年前までは校内に見本の写真を貼り、それを保護者が見に来て現金をやりとりする、というものでした。
写真店がネットでの購入への切り替えを提案しても「個人情報漏洩が心配」「ネットを使わない家庭もある」「近隣校との足並みをそろえたい」という理由でなかなか実施に至りませんでした。
幼稚園・保育園や各種スポーツイベントの写真販売で実績のあることでもこのような有様です。

このような学校の学校の体質がこのまま続けば、「脱はんこ」のかけ声は、単に押印欄をなくすだけの試みで終わってしまうでしょう。

大切なことは脱はんこではなく、情報共有の電子化と省力化

大切なのは、「押印欄をなくす」ことではなく、「連絡手段デジタル化し、家庭・学校共に利便性を高め、負担軽減に繋げる」ことです。

文部科学省も、今回の通知について

学校や保護者の間で迅速な情報共有や両者の負担軽減につなげる

としています。

しかし、次のようなことに留意しないと、逆に教師の負担が増すことが想定されます。

  • 「欠席の連絡」「学校や学年かにの連絡」「アンケート」「行事への出欠確認」等が統一されず、複数のシステムを併用することになり、煩雑になる
  • 集計に手間がかかる
  • 配信や集計のフォームを担当の職員が作成することになり、担当者の負担が増大する

学校ごとにシステムを導入すると、上記のようなことが起こることが起こるでしょう。
一つの画面で全ての連絡方法がとれるシステムを自治体単位で導入しないと、学校や教職員の負担軽減にはならないでしょう。

本来は文科省に言われなくても学校の権限でできる

昭和40年代まで、学校の連絡網には「呼出」という人がいました。全家庭に電話が普及していなかったので、その家庭へ連絡する場合は、近隣の家庭に電話をし、その家を呼んでもらうのです。
家庭と学校とてネットでの連絡手段を使おうとした場合「スマホを持っていない家庭もある」「インターネットが使えない家庭もある」ということを理由に導入しないことが多いです。しかし、連絡網の頃でさえ、電話がない家に配慮して個別対応していたのです。ネットが使えない少数の家庭は個別対応すればいいのです。

連絡の電子化・デジタル化は、本来は文部科学省や教育委員会の通知や指示がなくても、校長の権限でできることです。
きっと今まで職員から申し出や提案があっても「電子化はダメ」と言っていた管理職も、今回の文科省の通達を受けた教育委員会から通知が来たら、手のひらを返して「デジタル化を推進しよう」と言うでしょう。
学校が(管理職が)、先例踏襲、上意下達、横並びにとらわれることなく、本当に教職員や保護者にとってよいもの、働き方改革につながることを考え実行してもらいたいものです。




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