世の中には、答えのないことが本当に多く存在します。答えのない問いについて考えを巡らせて、よりよい解決につながる「方法」を探っていくのが「哲学」です。
「てつがくおしゃべりカード」で道徳の授業
そこで、道徳の時間に子どもたちと「てつがくおしゃべりカード」を使って哲学を楽しみました。子どもたちとの哲学はとても素敵です。難しいことではありません。 哲学には正しい答えも間違った答えもありませんし、事前の知識もいりません。
大切なのは自分の頭で考えることです。 『てつがくおしゃべりカード』の50の問いは、子どもたちの哲学的思考力を高めてくれます。「哲学的な問い」には4つの特徴があります。
- 本にも百科事典にもウィキペディアにも答えがない問い
- 大人も(知っていそうで)本当はよくわからない問い
- 意見を聞く問いではありません
- 科学的な知識を聞く問いではありません
どの『てつがくおしゃべりカード』にも、真実・時間・友情・アイデンティティ・平等・自由など、 さまざまな哲学的テーマを引き出す問いが、可愛らしいイラストと共に書かれています。
具体的な問いをいくつか紹介します。
- うれしいって気持ちはどこでうまれるの?
- だれかと一緒の方がいい考えが出てくる?
- お話には、かならずはじまりがないとダメ?
- お父さんも赤ちゃんがうめるようになったら何がどう変わる?
- アリがだれかに食べられた。そのアリは、まだどこかにいる?
- シロクマでも寒いと感じることはある?
話し合う方法について学ぶ必要
しかし、「哲学的な問い」を楽しむためには、話し合う方法についても学ぶ必要があります。友達の解釈についてフィードバックができなかったり、自分の解釈だけ伝えて終わりになったりしてしまうということもあります。四人で話し合ってみようと伝えると自分の意見を一人ずつ話して終わりというグループをたくさん見てきました。これは、話し合いではなく、単なる意見の共有です。
教師が何かを決めることのような話し合いの目的を用意しなければ話し合えないのでは困ります。
「共有」と「話し合い」の違いについて子どもたちによく話して聞かせました。友達が解釈したことに対して、自分の解釈を返したり、問いかけたりすることを3回は繰り返そうと伝えています。「解釈」のレベルを上げるために読書家の時間で、「解釈」について時間をかけて学んできました。子どもたちが解釈するときに使っている言い回しは次の通りです。
- これを読んで(聞いて、見て)分かったことは・・・
- 私の考えが変わったことは・・・
- 前は・・・と思っていたけど、今は・・・と思います。
- 私の新しい考えは・・・
- 私は・・・だと思い始めています。
解釈することに慣れてくると、自分の意見を伝えたり、友達の意見を聞いたりすることが楽しめるようになってきます。「〇〇さんの意見面白い。」「そんな考え方するんだね!」「予想と全然違った!」という声が聞こえてきます。
自分の意見はいつも言わなければダメ?
さて、あるグループの哲学的な問いは、「自分の意見はいつも言わなければダメ?」という問いでした。
いつも言わなくてもいい。言いたくないこともあるから。パスOK!
先生たちはいつも意見を言うように求めてくるよね。
言わないと何を考えているか分からない。言った方が良いときもあるよね。
言うか言わないかは、自分で決めればいいんじゃない?
このように様々な視点で話し合いを続けていました。この後も同じ問いで7~8分話していました。この日は、20分間の話し合いでしたが、多いチームは3~4つの問いを使い、少ないチームは、2つの問いで20分間話していました。
自分の考えを自由に解放
話し合いを観察して一番思うことは、子どもたちが楽しんでいるということです。哲学的な問いにより、自分の考えを自由に開放しているように見えました。自分で考えた自分だけの答え。みんなに聞いてもらえるのが嬉しそうでした。
問いについてさらに追究していくような様子も見られました。誰も思いつかないような突拍子もない答えを考える子もいましたが、理由を聞いてみると納得できました。新しい視点を得られるようなクリティカルな考え方でした。
また、沈黙を大切にできるようになりました。考えが思いつかないとすぐにパスをするところがありましたが、「ちょっと待って。」と言ってアイデアが思いつくまでみんなが沈黙して待つような班もありました。意見の対立を楽しめるようになったのも良いところです。互いの視点に立って説得合戦のようになっていました。
自然や社会、生活などにも哲学的な問い
子どもたちが哲学的な問いに慣れてくると、自然や社会、生活などから自分自身で哲学的な問いをつくることができるようになってきます。道徳の教科書を読んで、そこから道徳的な価値に触れられるような問いも作れるようになります。
クラスで取り組んでいる「P4C philosophy for children 子どものための哲学」は、まさにこのやり方を応用した道徳の授業です。誰もが頭をフル回転させて哲学的な問いを楽しんだり、道徳的な価値を追究したりしているところを見ているとこちらも意見を言いたくなりますよ。
※この記事は、小学校教諭「イマシュン」さんの投稿です。
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