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情報社会にしなやかに関わっていくために

〜刹那的快楽に身を委ねる子どもたちにできることは〜

※このコラムは2013年1月 YSRS(横浜市学校レクセミナー)の1月セミナーで執筆したものを元にしています。


 現代社会の子どもの置かれている問題点として、テレビやゲームなどの仮想現実との関わり、ソーシャルメディアとの関わりがあります。私たちの子どもの頃もテレビとの関わりが社会的課題となっていたことを考えると、その問題が解決せぬまま現れた、より刺激が強く、刹那的に快楽が得られるゲームの存在や、身体表現を伴わず心情がダイレクトに伝わってしまうネットでのコミュニケーションの存在は、成長過程にある子どもにとって、大きな影響力ある問題であると言えるでしょう。


 (2013年当時)担任をしている小学1年生の子どもたちは、ほとんどの家庭でテレビやゲームと接する時間のルールが決められています。逆に言えばそのようなルールがなければ無制限にゲームをしてしまうということです。家で家事に取り組む冬休みの宿題に対しても、「テレビやゲームに夢中になって忘れてしまった」という子どもがとても多かったです。小学生も高学年になれば毎日のようにyoutubeの動画を見ています。自分の好きな情報のみ延々と見ることができるネット検索の利用法は、多種多様の情報に接することができるため、情報に対する見地が豊かになるという、本来の情報社会の理念に反することであり、「情報の偏食」が進んでいる姿だとも言えます。

刺激的かつ刹那的な情報におぼれない方法、情報の偏食に対応する方法を以下のように考察します。


 1つ目は情報社会の理念への理解を教師も子どもも深め、その理念に沿った教育を進めることです。情報社会は「協力・協働・共有」を理念としてると考えます。1人で取り組むよりも皆で取り組む方が効果的である、個人の課題も協力して取り組むことにより、集団の問題として解決すべき価値に高まるという理念から、ネットワーク社会は成り立っているのです。人は自分の所属するコミュニティを大切にしたいという思いをもっていることを考えると、ネットワーク社会を自分の所属する、大切なコミュニティと考え、節度やルールを守っていこうという共通理解を育む気持ちと、それを育む教育が大切であると言えます。


 2つ目は、多様なリアルな体験をすることにより、情報の裏にあるものに対して「リアル」に感じていく見地を育てることです。YSRSはゲーム・ソング・ダンス等の効果的な活用や体験的活動によりコミュニケーション力の育成をしたり、そのような体験を作り続けようという人材育成に対するノウハウを多く持っています。「リア充」という言葉があるように、仮想現実の中でつながっている人々もリアルなコミュニケーションに対してプラスの価値付けをし、リアルなコミュニケーションを求めていくという傾向があります。仮想現実やネット等のテキストに変換されたコミュニケーションの裏や奥には、現実の人の営みがあることに気付き、それらと適切に接することができるようにするためにも、「リアル」な体験を積み重ねることがきわめて大切であるでしょう。


 私は、情報社会における公民的資質を「情報の価値判断を自分で下せる、自立した個人が問題意識をもち、人と人との関わりを求めながら協力・協働できること」と定義しています。表層的な情報やコミュニケーションに溺れずに、「リアル社会」にも「サイバー社会」にも豊かに、しなやかに関わっていくためには、リアルな体験、実感的な体験を積み重ね、情報の奥や裏にある人の営みに気付いていくことが大切です。

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