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教員不足の実態を考える

2020年2月9日 BESTTIMESより

本サイトでは、「深刻な教員不足」について話題にし、そのことを紹介しているネット記事を度々取り上げています。

以下の記事も、教師不足の実態をよく伝えています。

仕事に嫌気がさして辞める教員も増える一方だし、定年退職者の増加も相まって、ますます教員不足は深刻になっている。SNSに「うちの地域で教員をやってくれる人はいませんか」という呼びかけが流れるのも珍しくないのが現状なのだ。

東京新聞』(2019年10月20日付)が、「教員不足 公立小中500人 本紙1都6県」という見出しの記事を載せている。関東1都6県、計39の自治体の教育委員会を対象に、同紙が独自に行ったアンケート調査の結果記事である。
記事は、「調査結果によると、小学校では13自治体で常勤344人、非常勤39人が不足。中学校も13自治体で、常勤83人、非常勤37人が不足していた」と伝えている。さらには、「小学校では学級担任13人が、中学校では学科担任23人が不足していた」とも伝えている。

 
朝日新聞』(2019年8月5日付)も「公立小中、先生が足りない 全国で1241件『未配置』」という見出しの記事を載せている。
記事は、「教育委員会が独自に進める少人数学級の担任や、病休や産休・育休をとっている教員の代役などの非正規教員が見つからないためで、朝日新聞が5月1日現在の状況を調査したところ、1241件の『未配置』があった」としている。さらに、「学校では教頭が代わりに授業をしたり、少人数学級をあきらめたりしており、教育の質にも影響が出かねない」とも述べている。

2020年2月9日 BESTTIMESより

記者の調査から漏れている自治体、公表していない自治体も多数あることを考えると、実態はこの何倍も教員不足が進んでいます

以前の投稿でも述べたように、この不足分は「非常勤講師」が埋めることになります。

『朝日』の調査によれば、教員不足には地域によってバラツキがあるようで、その理由を「非常勤講師の使い方に差があるためだ」としている。
そして、記事はこう続ける。
「常勤講師が見つからない場合、非常勤講師をあてるかどうかは教委によって異なり、調査では47教委が「非常勤をあてた」と答えた。一方、熊本、茨城両県のように、『非常勤講師をあてない』と答えた教委は、未配置が増える傾向にある」

 これでは「未配置は非常勤講師を活用していないから」だと聞こえる。同記事の説明によれば、非常勤講師とは非正規教員のなかでも「パートタイム」の講師だそうだ。つまり、必要なときだけ雇える非正規教員ということになる。

 パートタイムを活用しないから未配置が増える、というのは、まるでコンビニの経営のようでもある。人手不足は、コンビニにとって常態化した課題になってしまっている。その原因のひとつは、賃金の安さだ。

2020年2月9日 BESTTIMESより

「常勤講師(臨時任用的職員)が見つからないときに非常勤講師を充てる」理由をこの記事では「安く雇いたいから」としていますが、実際にはそれ以上に「常勤はしたくない」という人が多く、常勤講師(臨時任用的職員)の見つからず、やむを得ず非常勤を雇う、という場合が多いのです。

義務教育における教員の給与は、3分の1を国が、残りを自治体が負担している。

国としては定数分の3分の1の予算を地方に渡すが、その使い方は「裁量次第」という仕組みだ。

 たとえば、定数として数えられる正規教員1人の収入を便宜的に年間600万円だとすると、その3分の1である200万円が国から自治体にわたる。本来であれば、自治体は400万円を負担して正規教員1人を雇わなくてはならない。

 それが総量裁量制では、国からの200万円を教員1人分として使う必要がない。300万円で1人を雇い、国からの200万円から100万円を出せば、自治体の負担も200万円で済む。もともと1人分として使わなければならない国からの200万円、自治体負担分400万円を使えば、それで2人を雇うことができる。
 定数を守っていれば1人しか配置できないが、これなら2人を配置できることになるのだ。

 ただし本来の半分の賃金しか払わないのでは、正規の教員が納得するはずがない。そこで、非正規教員を採用するわけだ。正規社員の給料では必要人員を確保できないので、パートやアルバイトといった低賃金労働者で補うのと同じである。

2020年2月9日 BESTTIMESより

定員1人に給料で2人を雇うのは、この記事の通り「トリック」なのですが、その「トリック」すら活用できず、足りない人員を現場で働いている人で負担し、疲弊が進んでいるのが実情なのです。

問題は、資格のいらないコンビニでも低賃金では人が集まらないご時世に、そんな低賃金で働く教員免許取得者が都合よくいるかどうか、である。

2020年2月9日 BESTTIMESより

非常勤講師の時給は自治体によって違うのですが、一般的に2,000円〜3,000円です。この時給を高いと見るか安いと見るかは人それぞれですが、一般的なパート、アルバイトの2〜3倍です。
正規採用職員よりは安いですが、正規職員が残業代が出ていないことを加味すると、実質的な時給は管理職でも2,000円〜2,500円です。
一概に非常勤講師の時給が「安い」とは言えないのです(正規職員の給与が安すぎるとも言えます)。

低賃金、つまり限られた報酬であれば、それだけ要求できる仕事量も責任も狭まったものにならなければならない。ところが、学校現場では非正規教員についても、教員と同じくらいの仕事量と責任が求められているのが現実だ。

その問題を放置しておいて、「未配置が増えているから非正規を増やせ」しかも「なかでも低賃金の非常勤講師を増やせ」というのは、学校現場を荒廃させることにしかならない。

子どもたちが学ぶ場にふさわしい学校環境を整えるためには、教員の働き方とともに、採用の在り方も問い直さなければならない状況にある。

2020年2月9日 BESTTIMESより

「非正規職員」と言っても、「臨時的任用職員(臨任)」と「非常勤講師」は全く違います。

臨任はこの記事のように正規職員と同じ仕事量と責任が求められます。

しかし非常勤講師は授業以外の仕事はなく、時給で働いているので残業もありません。公務員ではないので、職務専念義務もありません(平成元年度まで)。副業もOKです。しかし授業がない日は給与が発生しないので、収入が不安定です。年休も学校が変わると繰り越せません。

教員不足を解消するため、安心して教員が働けるようにするためには、正規、非正規問わず、待遇の改善が不可欠です。

正規職員は、残業代を払う、または残業をしなくて済む働き方になるよう、業務を改善する

臨時的任用職員は、その仕事量と責任に見合う給与にする

非常勤講師は、雇用や社会保障の安定を図る

ことが求められます。

「『教員不足』の異常さに慣れてはいけない」2020年2月9日 BESTTIMESの記事はこちら

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