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「フードマイレージと地場野菜(5年総合)」食料と地球温暖化のつながりを考える

仮想カレーでフードマイレージを考える

 10月は世界的な食糧課題について複数の本を使って調べ、プレゼン大会を終えました。今回の総合的学習の時間(国語と社会と関連)は、食糧と地球温暖化のつながりを意識してもらうためにフードマイレージをテーマとして取り上げました。子どもたちには、

仮想カレーをつくるために食材を購入するゲームをします。

と伝えました。

食材は

・お肉
・野菜
・デザート

などがありました。

お肉には

・牛肉
・豚肉
・鶏肉

があり、産地や値段が違います。
オーストラリア産が最も安く買えます。

 仮想1,100円を渡して、選んでもらいました。


 以前だとこういうゲームをやる場合は、印刷した紙を渡して、切り取って使っていましたが、ロイロノートは、瞬時にカードも全員に渡すことができ、画面の中でカードを選ぶことができるので便利です。


次のような傾向が見られました

買った食材を仮想バッグで精算

 買った食材を仮想バックに入れて、精算しました。みんな1100円で収まっていたのですが、この仮想食材を販売した「SHOP今村」では、フードマイレージも料金に加算します。
 消費者が購入した商品を運送するのに排出した二酸化炭素を買い取ってもらい、その収益で二酸化炭素削減の取り組みをするSHOPなのです。


 本来のフードマイレージの計算は、距離(Km)×食品の重さ(t)なのですが、計算が難しくなってしまうので、Km×Kgにすることにしました。

 オーストラリア産の牛肉とブラジル産の鶏肉は、値段が安かったので購入している子がいました。子どもたちはiPadのマップアプリで首都までの距離を調べました。

オーストラリアまでの距離はおよそ6800km、
ブラジルまでのおよそ距離は17400kmになります。
子どもたちが購入した肉は200gなので、
ブラジル産の鶏肉の場合、フードマイレージは

17400×0.2=3480

になります。

「SHOP今村」は、それを代金に上乗せして請求します。

えーーーーーーっ!

という声。

 神奈川県産のものを購入していた子たちと比べてフードマイレージの差が大きく広がりました。食品の背景にどんなことが広がっているのか知り、値段だけでなく、環境や安全性、健康などに気をつけたものを購入することは消費者として必要なことです。


 日本はフードマイレージ世界一位の国です

「NHKスペシャル 2030未来への分岐点」で特集されていましたが、このまま世界が持続不可能な食糧システムを続けると2030年以降、日本でも食料による紛争が起きる確率が5〜6%あるそうです。今の日本では、信じられないことです。

フードマイレージを減らすには


 食糧課題についての調べ学習とフードマイレージの学びを終えて、何かアクションをしなければいけないと子どもたちは少しずつ考え始めていました。まずは、自分たちの住む横浜市や都筑区はどうなのか調べてみることにしました。

 「都筑区 地産地消」と調べてみると

都筑野菜

というワードが出てきました。調べてみると都筑区は横浜市の中で農地面積第2位。iPadのマップで調べてみると、ゴミ焼却工場(注:学校のすぐ近くに焼却工場があります)の何十倍もの広さの広大な畑が都筑区の南部に広がっていました。
 そして、そこで生産された野菜を地元で販売したり、飲食店で提供したりしていることが区役所が提供しているパンフレットを読むことで分かりました。都筑区の地産地消です。


 パンフレットはインターネットですぐにダウンロードすることができたので、ロイロノートにアップロードして子どもたちに配信しました。

どんな人が「都筑野菜」を広げているのかインターネットで検索してみると、都筑区区政推進課が担当していることが分かったので、次の日に代表者を決めて電話をしました。電話をしたのはAさんです。

 僕が3年前に授業で関わったことがあったBさんという方が区政推進課にいたので、

Bさんを訪ねて見るといいよ。

と子どもたちに伝えました。


 代表になった子は、ドキドキです。教室でスピーカーホンにして電話をしました。

はい。区政推進課のBです。

こんにちは。初めまして、○○小学校のAです。都筑野菜についてお伺いしたいことがあるのですが、ご都合はいかがでしょうか。

 二人のやりとりを周りの子たちは真剣に聞いていました。区役所の方からOKが出ると静かにガッツポーズ!電話が終わると歓声が上がりました。

区役所の担当者に話を聞く

 次の日に、Bさんがやってきました。ただ、話を聞くだけでなく、こちらが学習してきたことも伝えることにしました。世界的な食糧課題のプレゼン発表会をしていたので、クラスの代表の子にプレゼンをしてもらうことにしました。プレゼンしたのはCさんです。

輸入が多いままでよいのだろうか?

10億人が飢餓で苦しんでいるのに、10億人が肥満で悩んでいるのはなぜだろうか?

など、考えさせられる問いがありました。区役所の方はそのプレゼンに大きく感心をしていました。


 次は、Bさんに都筑野菜についてプレゼンテーションをしてもらいました。Bさんにあらかじめ送ってもらったプレゼンを子どもたちにロイロノートで配りました。プレゼンに書き込みながら都筑野菜の特徴を具体的に聞くことができました。

 話の中に、食料自給率やフードマイレージ、地産地消という言葉が出てきました。子どもたちが食糧課題について調べたことと結びつき、都筑区の取り組んでいることの価値に気づいた子が多くいました。それだけでなく

都筑区を盛り上げていくために、都筑区を好きな人を増やしたい。そのために仕事を頑張っているのだ。

という志も聞くことができました。
 プレゼンテーションに印をつけたところをもとにペアトークをして、インタビューにつなげました。

次はどうする?

 インタビューの後に、子どもたちに向けて、

次はどうする?

と投げかけました。みんなは、

うーーーーーん

という顔をしていたので、Bさんに、

都筑野菜を調べていく上で、この人には会ったほうがよいという方はいますか?

と尋ねました。

すると2人の方を紹介してもらいました。

1人目は、アーツファクトリーのDさんで、農家の方です。子どもたちは、直売所マップを開いてアーツファクトリーを見つけました。なんと場所はH台です。

うちの目の前だ!野菜を買ったことがある!

と、Eさんが教えてくれました。

2人目は、みんなのキッチンのFさんです。お手紙弁当という都筑野菜をメインにしたお弁当の取り組みをしています。Gさんが

あれ、昨日配られた手紙で見たぞ!

と叫びました。


 するとHさんがその手紙を持っていたので、みんなに共有しました。お手紙弁当のお手紙は小学生も書いているようです。お弁当と一緒に買ってくれた人を元気づけるメッセージを書いているようです。

 次の活動が見えてきました。子どもたちは都筑区の地産地消を推進する組織の一部になれるのでしょうか。楽しみです。

※この記事は、小学校教諭「イマシュン」さんの投稿です。

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