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高校の授業にスマホ“解禁”の動き

携帯電話、スマホの学校への持ち込みは、「学校の教育活動に直接必要がない」という理由で、原則持ち込み禁止になっています。

子供の携帯電話の利用の拡大に伴い、「ネット上のいじめ」や有害サイトを通じて子供が犯罪に巻き込まれる危険性が、社会的に大きな問題となっています。  
文部科学省では、平成21年1月に、学校の携帯電話の取扱いについて、小・中学校では、やむを得ない場合を除き原則持ち込み禁止、高等学校では校内での使用制限等を行うように、方針を明確に示しました。 

文部科学省「子どもの携帯電話をめぐる問題」

この通達が出たのは10年以上前のことです。現在では「携帯電話(スマホ)」は通信機器というよりも、コミュニケーションツールとしての位置づけが強く、スタディサプリを始めとする学習用デジタルコンテンツの使用が若者の間では当たり前になっています。
家庭ではスマホを使って学習するのに、学校では「紙と鉛筆と黒板」というのは、時代に即しているとは言えません。

また、新型コロナウイルス対策のため、「テレワーク」や「オンライン授業」が求められるようになりました。当然デジタルデバイスを活用することが前提なので、それらの機器を家庭では使用しつつ学校では使用できないとなると、学習の連続性が難しくなります。

2020年6月に文部科学省は、「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」の提言を受け、小中学校での携帯電話の持ち込みを一部緩和しました。

緊急時の有用性も考え、文科省は19年春から有識者会議で通知の見直しを議論。中学生の携帯の利用率の上昇や、部活動で帰宅が遅くなることを考慮し、
①学校での管理方法や紛失時などの責任の所在を明確化
②フィルタリング(閲覧制限)を保護者の責任で設定
③学校や家庭が携帯電話の危険性や正しい使い方を指導――
の条件付きで持ち込みを認めることにした。この3点について学校と生徒、保護者が合意した上でのルール作りを求める。

2020年6月24日 朝日新聞「中学校に携帯持ち込み、条件付きで容認 文科省が見直し」

しかしこの「緩和」は、あくまで連絡手段としての活用のためであり、学習場面での活用は想定していません。

高校はこれまでも持ち込みに制限はなかったのですが、授業中の使用を禁止している学校が殆どでした。

文部科学省の19年8月の抽出調査によると、公立高の8割超が校内や授業中の使用を禁止し、約1割は持参が禁止もしくは原則禁止だった。

2020年10月15日 西日本新聞「授業にスマホ“解禁”の動き 文科省は制限する中…現場が先行」

小中学校はGIGAスクール構想の前倒しのため、今年度中に小中学校に学習用端末1人1台が実現します。しかし、高校については2022年度までに3人に1台配備の方針にとどまっています。

そのため、個人が所有する端末を職場や学校で使用する、BYOD(Bring Your Own Device)を進める動きが広まっています。

福岡県須恵町の県立須恵高(生徒数870人)は本年度、授業で本格的にスマホを使い始めた。例えば、9月下旬の生物の授業。プリント問題を解き終わった生徒から自分のスマホで教諭が作った解説動画を視聴していく。分からない部分を繰り返し見たり、ネット検索したり、質問や考えを書き込んだりしながら、理解度に応じたペースで学ぶ。

担当する坂本仁教諭(33)は「挙手しての発言が少ない生徒も参加し、学級全体で対話できる」と手応えを感じている。

生徒にも「スマホで授業と関係ないものを見ようとは思わない。書き込む意見や質問が評価されるため授業に集中している」と好評だ。

2020年10月15日 西日本新聞「授業にスマホ“解禁”の動き 文科省は制限する中…現場が先行」

スマホを学習中に持ち込むと「学習が個別化して交流がなくなる」「学習に関係ない使い方をする」と思われがちですが、今の高校生は生まれたときから携帯がある「デジタルネイティブ」です。大人より、スマホのTPOに応じた使い分けや、適切なコミュニケーションの方法を知っていると言えます。

福岡県教育委員会によると、県立高はそれぞれでスマホの使用ルールを策定し、須恵高以外でも活用が広がっている。
熊本、大分、鹿児島3県でも学習記録や調べ学習に使う高校があり、宮崎県は持ち込みの是非を検討し始めた。
生徒1人に1台のパソコンを配備済みの佐賀県は校内でのスマホ使用を一律禁止。
長崎県は原則持ち込みを禁止している。

2020年10月15日 西日本新聞「授業にスマホ“解禁”の動き 文科省は制限する中…現場が先行」

コロナ対策のため、オンラインやオンデマンド学習を取り入れた学校も多くあります。オンライン学習と通学しての対面学習を併用する動きは益々盛んになるでしょう。
高校でも1人1台端末を学校が用意されている状態が理想でしょうが、普段使い慣れている自分のスマホを学習に活用する方が効率がよく、セキュリティ等の指導も具体的に行いやすくなると言えます。


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