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日本の子どもがスマホ・ネット・ゲーム依存は本当?

香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例案」が物議を呼んでいます。
その素案は、元々

・スマートフォンなどの使用時間は1日、平日60分、休日90分までとする
・義務教育修了前は午後9時まで、それ以外は午後10時までに利用を終える
・学校などはネット・ゲーム依存対策に協力するものとする

2020年1月21日 FNN PRIME「「スマホとゲームは1日1時間」驚きの条例案が物議…その後「ゲームのみ」に修正した理由を香川県に聞いた」より

というものでした。この案はその後

というものにトーンダウンしましたがいずれも、

子どものネット利用やスマホ利用は健全育成に悪影響があるので、利用制限するべき


というマインドで作られています。

この条例に対して、「子どもを守るために必要だ」「行政が決めるのはおかしい」と賛否両論飛び交っています。

この条例案は、「日本の子どもはスマホ、ネット、ゲームの利用が多く、依存している」ということを前提としていますが、果たして諸外国と比べどうなのでしょうか。

国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)の豊福晋平准教授は、PISA調査の研究、分析をしています。

その分析から、次のようなことが分かります。

①機器の利用開始年齢

ここでデジタル機器とは、携帯電話、デスクトップ・コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ゲーム機、インターネットに接続しているテレビなど様々なものを指します。

日本の子どもは世界的に見るとデジタル機器の使用開始年齢が遅いことが分かります。

②ネット利用時間

日本の高校生(15歳)のネット使用時間は、

日本の高校生は、ネット使用時間が短いのです。

③デジタル機器の利用

「あなたは、次のことをするために学校以外の場所でデジタル機器をどのくらい利用していますか(携帯電話での利用も含む)」

という設問に対して、日本の子どもが各国平均よりも著しく多いのは

です。メールの使用が著しく低いのは、メールがラインに取って代わったことが考えられます。

ラインや一人用ゲームなど、個人や身近な人との関わりで機器を使用するが、SNS に参加する、インターネットを活用する、情報発信するといった、コミュニケーションをとったり、関心を広く向けたりする利用の仕方はされていないことが分かります。

④学習でのデジタル機器の利用

学校以外の場所で学習にデジタル機器の利用しているか という設問からはは
「他の生徒と連絡をとるためにSNSを活用する」以外は10%以下。各国に比べて著しく低いのです。学習ではほとんど利用していない、といっても過言ではありません。

⑤デジタル機器への関心や態度

デジタル機器の関心やICT能力の自己評価、態度については、著しく低く、世界最低レベルです。

まとめると、日本の高校生(15歳)は

・デジタル機器もインターネットも使用開始年齢が高い
・インターネット利用時間は少ない
・ラインと一人用ゲーム以外は、機器をあまり活用していない
・学習ではほとんど活用していない
・デジタル機器への関心も能力も世界最低レベル

なのです。普段感じている印象と大きく違うのではないでしょうか。
世界的に見ると、ネットも機器も「全く使っていない」のです。

このまま規制や制限が続くと、学習への利用や、新しい見地への出会いといった、「ネットや機器活用のプラスの面」「これからの世の中を生きる力の育成」から益々遠ざけてしまうのではないでしょうか。

日本のデジタル読解力が低いことも、これらの子どもの利用状況と関係していると思われます。
ネットやデジタル機器の活用を「よくないこと」「できれば避けたいこと」と大人が子どもに声高に主張するのではなく、効果的な活用の仕方を提示し、有効な活用時間を増やし、機器を適切に整備する必要があるのではないのでしょうか。

大人が子どもの頃になかったものを恐れ、子どもから遠ざけるのではなく、寄り添いながら共に考えることが大切なのだと思います。

参考:
2020年1月26日産経新聞「【主張】香川のゲーム条例 子供守るルールは必要だ」

2020年1月21日 FNN PRIME「「スマホとゲームは1日1時間」驚きの条例案が物議…その後「ゲームのみ」に修正した理由を香川県に聞いた

2020年2月2日朝日新聞デジタル『「ゲーム1日60分」条例、他にも疑問点が 記者座談会』

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